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遠隔病理診断(テレパソロジー)とバーチャルスライド(WSI)のこれからー病理医不在でも病理診断を行うにはー

(この記事は約3分で読めます)

 近年、医師不足といわれていますが、中でも「病理医」の不足は深刻な問題になっております。
総合病院でも病理医が不在の病院は多々あります。そういった病院では、大学病院や病理診断学講座などから、週に1、2日などの頻度で病理医が非常勤で出向するというのが現状となっています。
そこで近年注目されているのが、遠隔病理診断です。
今回は、遠隔病理診断の詳細や、実際の利用方法などについてご紹介いたします。


目次[非表示]

  1. 1.「遠隔病理診断」とは
  2. 2.病理医不足の中、注目されている「バーチャルスライド(WSI)」とは?
  3. 3.バーチャルスライド(WSI)導入における3つのメリット
    1. 3.1.①遠隔地での病理診断が可能
      1. 3.1.1.ー迅速な病理組織診断ー
      2. 3.1.2.ー術中迅速組織検査への対応も可能ー
      3. 3.1.3.ーコンパニオン診断への活用ー
    2. 3.2.②複写・共有が可能
    3. 3.3.③紛失や劣化の心配がない
  4. 4.遠隔病理診断・デジタルパソロジーが必要とされる背景と課題
    1. 4.1.病理診断(デジタルパソロジー)が必要とされる背景
    2. 4.2.遠隔病理診断(テレパソロジー)の課題
    3. 4.3.病理医不在の病院で遠隔病理診断を行う方法
  5. 5.メドメインのサービスについて
    1. 5.1.ImagingCenter(バーチャルスライド作製受託サービス)
    2. 5.2.PidPort(デジタル病理支援クラウドシステム)


「遠隔病理診断」とは

遠隔病理診断とは、遠隔地の病理医でも病理診断ができる診断システムのことです。
実際に作製した病理標本のプレパラートを、スキャンしてデジタルデータにします。
そのデータをインターネット回線等を利用して転送することで、他モニターで閲覧することができます。
この方法を利用して、遠隔地での病理診断が可能になり、このことを総じて遠隔病理診断、または「テレパソロジー」と言われています。
現在では、病理医が他院に赴き病理診断を行うことが多いですが、このシステムを利用することで病理医が移動する必要がなくなります。
遠隔病理診断は、元々緊急度の高い術中迅速組織診断のために導入され、今では様々な用途に広がってきています。

病理医不足の中、注目されている「バーチャルスライド(WSI)」とは?

導入事例_国際医療福祉大学_03

バーチャルスライド(※)とは、作製した病理標本のプレパラートをスキャンして、高解像度のデジタルデータにしたものをさします。
遠隔病理診断(テレパソロジー)では、PCのモニターを見て、バーチャルスライドを病理医が診断します。
もちろんバーチャルスライドは、モニター上で倍率や観察位置を変えることができ、実際の顕微鏡で観察しているように、病理診断をすることができます。

(※バーチャルスライドはWhole Slide Imagingの略語「WSI」とも呼ばれています)

バーチャルスライド(WSI)導入における3つのメリット

バーチャルスライドの導入には大きく3つのメリットがあります。

①遠隔地での病理診断が可能

インターネットやネットワークなどの利用により、遠隔地でもバーチャルスライドの閲覧ができ、病理診断が可能となります。
病理医が不在の病院であっても、スムーズな病理診断ができるということです。
遠隔地での病理診断が可能になることによるメリットは以下に示します。

ー迅速な病理組織診断ー

患者様が病理組織検査を行った場合に、病理医が不在の病院ですと結果が出るまで(TAT)に日数を要してしまうことも多々あります。
特殊染色や免疫染色が必要になった場合も、作製でき次第、追加でデータの確認が可能です。
バーチャルスライドを利用することで、このTATの短縮を可能にし、患者様により早い医療提供ができます。

ー術中迅速組織検査への対応も可能ー

手術中に行われる術中迅速組織検査ですが、病理医不在の病院では以下のような方法が取られます。
・病理医が来院する日のみの対応
・技師などのスタッフが、組織片やプレパラートを他院の病理医へ持っていく
日にちが限られてしまったり、時間を要するため手術時間の延長を余儀なくされます。
バーチャルスライドの導入により、スムーズな術中迅速診断が可能です。

ーコンパニオン診断への活用ー

近年、ゲノム検査などのコンパニオン診療に関する遺伝子検査が増えています。
ゲノム検査では、『クオリティーチェック(QC)』という検査に適した標本であるかのチェックが必要です。
QCでは、組織片の固定条件(固定液・固定時間など)や脱灰液の使用の有無や種類、FFPEになってからの期間、腫瘍細胞割合をチェックします。
特に、病理医には腫瘍割合を確認してもらう必要があり、場合によっては腫瘍の部にマーキングをしてもらう必要があります。
病理医不在の病院では、未染プレパラートやFFPEブロックを他院へ郵送しているのが現状であり、QCにも日数を要します。
バーチャルスライドを利用することで、QCも迅速に対応可能で、ゲノム検査への可否も早くわかることができます。

②複写・共有が可能

デジタルデータのため、複写や共有が簡単に可能となります。
複写や共有をすることで、複数人で同時にバーチャルスライドを閲覧することができます。
具体的な活用の場としましては、カンファレンスやコンサルテーションなどです。
複数人で同時にみる、または違う場にいる方に相談をするという場合に重宝します。

③紛失や劣化の心配がない

実際のスライドガラスのプレパラートですと、診療科や他院へのプレパラートの貸出による紛失や、保存状態などによる染色性の低下などの劣化がおこります。
またプレパラートはガラスですので、欠けてしまったり割れてしまったり、破損してしまう、という場合も少なくありません。
その点、バーチャルスライドではデジタルデータですので紛失や劣化することはありません。
さらに、プレパラートの保管に関して場所を取ってしまうこともありますが、デジタルデータとして保存されているのでプレパラートを保管しておく必要もなくなります。


遠隔病理診断・デジタルパソロジーが必要とされる背景と課題

ここでは遠隔病理診断やデジタルパソロジーが必要とされていている背景と浸透を妨げている課題についてご紹介していきます。

病理診断(デジタルパソロジー)が必要とされる背景

遠隔病理診断(デジタルパソロジー)が必要とされる背景は、「病理医の不足」です。

2022年12月6日現在の「病理専門医」は2726名であり、内科専門医の37,789名の10分の1以下で、かなり少ないです。病理検査室がある病院であっても、病理医が常駐していない病院は多くあります。

病理医不在の病院では、以下の方法で病理診断が行われます。

・週に数日、他院などから病理医が来院して診断する。

・作製したプレパラートと検査依頼書を、病理医のもとへ郵送して診断する。

これらの方法では、迅速性に欠けてしまうのが現状であり、患者さまが検体採取してから結果を知るまでに日数を要します。

さらに、病理医の業務時間が圧迫されているのが現状であり、検体を提出した主治医と病理医の間で直接の意見交換ができる体制にないため迅速な対応や診断の質の向上が図れないという問題点もあります。

このような状況を打破するには、病理業務全体としての簡素化、省力化、自動化を図り、病理医の負担を軽くし、同じ時間内で行う作業量を増やす効率化を求める必要があります。少ない数の病理医に精神的ストレスが加わることなく、短い時間で多くの仕事がこなせるようにすることが大事です。

そして、同じ方法の下で、多くの病理医がグループとして互いに支援し合い診断の精度向上を図ることが重要となっています。

遠隔病理診断(テレパソロジー)の課題

遠隔病理診断(テレパソロジー)の課題は、デジタル機器の操作の利便性・簡便さの向上です。
病理医にとってデジタルパソロジーの導入により大きく働き方も変わります。
業務を効率化するはずのデジタルパソロジーで業務量が増えるという逆転現象が起こってしまう可能性も否定できません。
病理医の精神的ストレスを軽減するためにも、利便性が高く簡単に操作できる技術の開発は必要です。また、スキャナなどのデジタル機器の導入コストが高いことも課題の一つです。

病理医不在の病院で遠隔病理診断を行う方法

病理医不在の病院で遠隔病理診断を行う場合には、まずバーチャルスライドシステムの設備が必要です。
バーチャルスライドシステムは、作製された病理標本を高速でスキャンして高解像度のデジタルデータに変換する機器と、その周辺設備のことです。
バーチャルスライドシステムを用いて、現場の臨床検査技師が作製したプレパラートをスキャンさせてデジタルデータにします。

さらに、スキャンしたデジタルデータをネットワークなどで転送して、画像共有できるソフトウエアが必要です。
画像共有の機能を利用することで、遠隔地の病理医に診断の依頼をすることが可能となります。

また、デジタルデータの保管・管理の機能を持ったソフトウエアも必要です。
現場のニーズにあった、保管・管理の機能があるソフトウエアを選択することで、業務改善につながります。




【記事監修】福嶋 敬宜先生

一般社団法人PathPortどこでも病理ラボ 代表理事
自治医科大学病理学・病理診断科 教授





メドメインのサービスについて

さて、ここまで遠隔病理診断(テレパソロジー)とバーチャルスライド(WSI)のこれからについてご紹介させていただきましたが、弊社メドメイン株式会社では、ガラス標本スキャニングサービスの『ImagingCenter』、デジタル病理支援クラウドシステムの『PidPort』を提供しており、デジタル病理における環境構築をトータルサポートしております。


ImagingCenter(バーチャルスライド作製受託サービス)

『ImagingCenter』は、迅速かつ高品質なバーチャルスライド作製の受託サービスで、プレパラートのデジタル化1枚からご依頼可能です。

以下のような課題はございませんか。

・プレパラート(ガラス標本)の保管・管理のコストや手間を削減したい
・レパラート(ガラス標本)を複数人や施設と手軽に共有できるようにしたい
・できるだけ安価かつ高品質にバーチャルスライドを作製したい
・スキャナを導入したいが、コストや人的リソースの問題で諦めている
・スキャナを導入しているが、時間・人手不足によって活用できていない

バーチャルスライドを導入するにあたり、懸念される点は大きく2つあります。
まず1つ目は『コスト』です。
スキャナを購入するコストは非常に大きな問題です。
遠隔病理診断に対する診療報酬の体制から、導入コストの採算がとれるというものではありません。大きな予算がつくのは難しいことも多いでしょう。
次に2つ目は『時間・人手不足』です。
現場の臨床検査技師にとって、プレパラートを作製するのみでなく、スキャンするという作業は時間・人手が必要となります。
慣れない作業の上、運用の方法なども決めなければならず大変な労力を要します。

これらの懸念を『ImagingCenter』は解決いたします。
Imaging Center(イメージング・センター)では、お客様からお預かりした病理組織・細胞のガラス標本(病理標本・病理スライド)をデジタル化し、⾼精細なバーチャルスライドとして納品いたします。
過去の病理標本の保管・活⽤はもちろん、オンラインでのカンファレンスや、関連施設間での遠隔病理診断・コンサルテーションにいたるまで、病理診断に関わる様々な業務に新たな価値を提供し、デジタルパソロジーの環境構築を最⼤限にサポートします。


  高品質・迅速なバーチャルスライド受託サービス「Imaging Center」| メドメイン株式会社 お客様からお預かりした病理組織・細胞のガラス標本(病理標本・病理スライド)をデジタル化し、⾼精細なバーチャルスライドとして納品するImaging Centerが、デジタルパソロジーの環境構築を最⼤限でサポートします。 メドメイン株式会社


PidPort(デジタル病理支援クラウドシステム)

『PidPort』はデジタル病理標本の最適な保管庫としてご利用いただける、病理画像管理クラウドサービスです。

以下のような課題を『PidPort』は解決します。

・病理医不足による業務負担や心理的負荷が大きい
・病理標本の保管・管理工数が増え続けている 
・症例の共有やコンサルテーションを手軽に実施したい
・各診療科とのカンファレンスをオンラインで実施したい
・バーチャルスライドをうまく活用できていない

複数の医療関係者がクラウド上にある病理標本を、いつでも・どこでも閲覧可能にします。施設を跨いだ大規模なデータベースの構築にもお役立ていただけます。効率的で迅速な病理診断をトータルで支援します。
納品方法はPidPortのシステム上に限らず、HDD等での納品も可能です。PidPortを希望される場合は、お客様の専用アカウントとストレージを発行します。その際はメールアドレスだけでアカウント発行が可能です。

活用が期待されるシーンは以下の通りです。
・遠隔病理診断/コンサルテーション
 グループ病院や各地に抱える関連病院との間に、強固な相互扶助のネットワークを構築することで、日々の診断業務をより快適にし、現場の病理医の負担を軽減します。

・カンファレンス/CPC
 新型コロナウィルス感染症の流行に伴い、密集する空間を避ける必要がある環境下で、自宅などの遠隔地からでも容易にカンファレンスを開催・参加できる体制を整えます。

・症例共有・講義
 注目視野の限られた顕微鏡写真による学習ではなく、病理診断用の標本全体をバーチャルスライドでじっくり観察しながら学べる環境を構築することで、大きな学習効果が期待できます。


  デジタル病理を支援するAI搭載クラウドシステム「PidPort」| メドメイン株式会社 PidPortの詳細をご紹介します。デジタル病理標本の最適な保管庫としてご利用いただける病理画像管理クラウドサービス PidPortで、複数の医療関係者がクラウド上にある病理標本を、いつでも・どこでも閲覧可能に。効率的で迅速な病理診断をトータルで支援します。 メドメイン株式会社