術中迅速病理診断とは? バーチャルスライド(WSI)を用いたテレパソロジー導入で何が変わる?
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目次[非表示]
- 1.術中迅速病理診断とは?その目的・必要性とは?
- 1.1.術中迅速病理診断とは
- 1.2.術中迅速病理診断の目的と必要性
- 1.2.1.腫瘍の良悪性の判定
- 1.2.2.腫瘍の転移の有無
- 1.2.3.切除断端の悪性細胞の有無
- 2.通常の病理組織検査と術中迅速組織診断の違い
- 3.術中迅速病理診断の問題点・課題とは?
- 4.バーチャルスライドを用いた遠隔術中迅速診断で解決できること
- 5.まとめ
- 6.メドメインのサービスについて
術中迅速病理診断とは?その目的・必要性とは?
術中迅速病理診断とは
術中迅速病理診断とは、手術中の時間内に採取した組織を迅速に標本にして診断することです。
手術の最中に採取され病理部門に提出された生の検体を、臨床検査技師がプレパラート標本化し、それを病理医が見て診断します。検体提出から約15分〜30分で執刀医に結果を伝えることができます。その結果によっては、術式や切除範囲が変わることもあるため、病理診断において非常に重要な検査の一つです。
術中迅速病理診断の目的と必要性
術中迅速診断は以下の目的の為に行われます。
腫瘍の良悪性の判定
手術前に生検などが行えず、腫瘍の良悪性が判定されていない場合は手術中に良性か悪性かを知るために術中迅速組織診断が施行されます。
腫瘍の転移の有無
主にリンパ節に対して行われ、例えば、乳癌のセンチネルリンパ節、肺癌などの所属リンパ節が術中迅速病理診断に提出されます。
また、腹膜播種などの転移が疑われる結節などが発見された場合にも術中迅速病理診断が施行されます。
切除断端の悪性細胞の有無
悪性腫瘍を摘出する際に、切除断端が陰性であるかの確認のために術中迅速病理診断が施行されます。この術中迅速病理診断の結果により、術式や臓器の摘出範囲が変わります。
また、転移の有無や切除断端の陰性確認をすることで、手術中の悪性部分の取り残しをなくし、結果的に、手術回数を減らすことができる場合もあり、患者様の身体的負担や精神的負担、医療費の軽減にもつながります。
通常の病理組織検査と術中迅速組織診断の違い
通常の病理組織検査と術中迅速組織診断の違いは、プレパラート標本が出来上がるまでに掛かる時間です。通常の「病理組織診断」では、検査結果が判明するまでに最短でも約2~3日、大きな標本になると約1週間の時間が必要になりますが、「術中迅速病理診断」の場合は、約15分~30分で病理診断結果が執刀医に伝えられ、検査結果によって、術式や切除範囲が即座に手術に反映されることでより適切な手術方法の選択が可能になります。
術中迅速病理診断の問題点・課題とは?
術中迅速病理診断の一番の問題点は、その場に病理医が必要なことです。
迅速に標本を作製して、すぐに病理医に診断をしてもらう必要があるからです。
このため、病理医不在の病院では、病理医が来院する日に合わせて術中迅速病理診断を行ったり、病理医が在院する病院まで組織片を運んでそこで標本作製を行い診断をするといった事が行なわれます。
また、病院によっては、本来であれば術中迅速病理診断を行いたいが、不可能なために術中迅速病理診断を行えないままであるといったところもあります。全ての患者様が平等に検査を受けられるシステムの構築が、非常に必要であると考えます。
バーチャルスライドを用いた遠隔術中迅速診断で解決できること
先ほどの問題点である、病理医不在の病院での術中迅速病理診断は、デジタル画像(whole Slide Image(WSI))、つまりバーチャルスライドを用いた遠隔術中迅速診断を行うことである程度解決できます。
迅速に作製したプレパラート標本を、バーチャルスライドにすることで遠隔地にいる病理医による診断が可能になるのです。
バーチャルスライドスキャナなどの設備は必要となり、またスキャンにかかる時間が必要ですが、遠隔術中迅速診断ができることは、患者様によりよい医療を提供することに繋がります。
まとめ
現在では術中迅速病理診断は、病理医が不在の病院では実施が難しい状況にあります。この状況を改善するためには、バーチャルスライド(WSI)を用いた遠隔病理診断を利用して、術中迅速病理診断が行える環境が必要です。
【記事監修】福嶋 敬宜先生
一般社団法人PathPortどこでも病理ラボ 代表理事
自治医科大学病理学・病理診断科 教授
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