デジタルパソロジーとは?手軽に低コストで導入する方法は?
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目次[非表示]
- 1.「デジタルパソロジー」とは
- 2.なぜ病理医にとって「デジタルパソロジー」が重要か
- 3.デジタルパソロジーの基礎知識
- 3.1.デジタルパソロジーの歴史
- 4.デジタルパソロジーの導入方法
- 4.1.①スライドスキャナーの導入
- 4.2.②データ管理システムの導入
- 4.3.③デジタル画像ビューア
- 4.4.➃データ解析システムの導入
- 5.デジタルパソロジー導入のメリット
- 5.1.①診断精度の向上・患者の利益
- 5.2.②時間の短縮・業務効率化
- 5.3.③教育の質向上・研究の進歩
- 6.メドメインのサービスについて
「デジタルパソロジー」とは
デジタルパソロジー(Digital Pathology)とは、病理診断材料のデジタル化・電子化を意味します。具体的には、スライドガラス標本(プレパラート)を専用のスキャナーを用いてデジタル画像(ホールスライドイメージ)を作製することで、医療施設内や遠隔地の専門家がインターネット経由でデジタル画像(ホールスライドイメージ)を閲覧し、診断やコンサルテーションも行うことができるようになります。
ホールスライドイメージ<whole Slide Image(WSI)>はバーチャルスライドとも呼ばれています。
なぜ病理医にとって「デジタルパソロジー」が重要か
現代の医療分野において、デジタル技術はますます重要な役割を果たしています。その中で、病理医にとってデジタルパソロジーの利点は多岐にわたります。
デジタル化により、スライドガラス標本(プレパラート)の保存や共有が容易になることで、遠隔地の専門家との連携や教育・研究の促進にも貢献します。
現在、日本では病理医不足が深刻化しており、一人の病理医しか在籍していない病院が多数存在し、病理医が常勤していない病院も珍しくありません。
病理医が常勤していない病院では、他の施設の病理医に直接赴いてもらい診断を行ってもらうか、作製したスライドガラス標本(プレパラート)を、その病理医の施設に郵送して診断を行ってもらうといった方法がとられます。
しかし、デジタルパソロジーを導入することで病理医の移動にかかる時間や労力を減らし、効率的に病理診断を依頼することが可能となります。
また、病理医一人では、診断に苦慮する症例があった場合、他の病理医に相談することが容易でありません。しかし、そういう時にもデジタルパソロジーを用いることで遠隔地の病理医へ手軽に意見を求めることができますので、診断の効率向上が期待できます。
デジタルパソロジーの基礎知識
デジタルパソロジーの歴史
デジタルパソロジーの歴史は、病理スライドをデジタル画像に変換する技術の開発に遡ります。1990年代初頭に、初めて病理スライドの画像スキャンが試みられ、デジタル画像化されたスライドが作製されました。
2014年、欧州でWSIスキャナーが医療機器として承認され、デジタルパソロジーの歴史は大きく進展しました。これに応じて、米国病理学会(CAP)からデジタルパソロジーの使用におけるガイドラインが発刊され、病理診断のデジタル化が世界的な流れとなりました。
2017年には日本でもWSIスキャナーが医療機器として承認されたことにより、日本の診療においてもデジタルパソロジーが本格的に展開されるようになりました。
デジタルパソロジーは、画像処理技術や情報技術の進歩により急速に進化してきました。
これにより、病理診断の精度向上や診断の迅速化、医師間の連携促進など、さまざまな利点がもたらされているのです。
デジタルパソロジーの導入方法
デジタルパソロジーを導入するためには、スライドガラス標本(プレパラート)をスキャンしデジタル画像化するための『スライドスキャナー』、デジタル画像を保管、管理するための『データ管理システム』、デジタル画像を閲覧するための『ビューア』などが必要です。
また、効率的な診断を行うために『データ解析システム』の導入も望まれます。
①スライドスキャナーの導入
デジタルパソロジーを導入するためには、まずスライドガラス標本(プレパラート)をデジタル画像にするための『スライドスキャナー』の導入が必要となります。スライドスキャナーは組織の切片や細胞試料などの病理スライドガラス標本を高解像度なデジタル画像に変換する機器です。
②データ管理システムの導入
スキャナに続き、スキャンしたデジタル画像の保管や管理を行うための『データ管理システム』を導入する必要があります。WSIのような高解像度画像は保存や管理に大容量のストレージが必要となる上、検体の付帯情報の管理も必須なため、強固なセキュリティ対策も必要です。
③デジタル画像ビューア
デジタル化された病理画像(WSI)をPCやタブレットなどで見るためには、デジタル画像ビューアが必要です。メーカーによっては専用アプリを使用するようになっていたり、それらの不要なクラウド型ビューアもあります。病理医は、このビューアを用いることで、WSIをあたかも顕微鏡を見ているかのように、画像を拡大・縮小したり、視点をずらしたりしながら病変を観察していくことができるのです。
➃データ解析システムの導入
AIによるデータ解析システムを導入することで、見逃しの防止や標準化が可能となり、効率的な診断の一助となることが期待されています
病変の認識や、良悪性の判定、免疫染色の解析など診断のアシストができるのみでなく、腫瘍割合の算出や腫瘍部のセグメンテーションもできるAIモデルであれば、がんゲノム検査に対するクオリティーチェックなどにも活用できます。
デジタルパソロジー導入のメリット
①診断精度の向上・患者の利益
デジタルパソロジーを導入することで、遠隔地にいる病理医との病理像の共有が容易になります。また、珍しい症例などで、専門家へのコンサルテーションが必要な場合にも、病理所見や診断が共有しやすくなることで診断精度向上にもつながります。
また、将来的にはAI技術を病理診断に応用することで診断精度の向上へ繋がることも期待されています。悪性部分の判定のみならず、免疫染色での陽性細胞率や、染色強度の判定などもAIを用いることで、より客観的かつ効率的に行える可能性があります。
②時間の短縮・業務効率化
デジタルパソロジーの導入によって、遠隔地にある他施設の診断も可能となるため、病理医がわざわざその施設に出向く必要がなくなり、結果として両施設にとって業務の効率化が図れます。
また、従来の方法では、病理標本の保存や保管にはかなりのスペースが必要であり、またプレパラート標本の破損や劣化などが問題となることも少なくありません。しかし、デジタルパソロジーを導入することで、てデータの保存やバックアップさらに、過去の標本との比較のための検索・閲覧も容易になり、業務効率化とともに診断レベルの向上にも寄与します。
③教育の質向上・研究の進歩
デジタルパソロジーは、医学教育や研究の分野でも大きな進歩をもたらします。
つまり、学生や研究者はより広範な病理画像にアクセスし、研究や学習を効率よく進めることができるようになるのです。
【記事監修】福嶋 敬宜先生
一般社団法人PathPortどこでも病理ラボ 代表理事
自治医科大学病理学・病理診断科 教授
メドメインのサービスについて
さて、ここまでデジタルパソロジーついてご紹介させていただきましたが、弊社メドメイン株式会社では、ガラス標本スキャニングサービスの『ImagingCenter』、デジタル病理支援クラウドシステムの『PidPort』を提供しており、デジタル病理における環境構築をトータルサポートしております。
ImagingCenter(バーチャルスライド作製受託サービス)
『ImagingCenter』は、迅速かつ高品質なバーチャルスライド作製の受託サービスで、プレパラートのデジタル化1枚からご依頼可能です。
以下のような課題はございませんか。
・プレパラート(ガラス標本)の保管・管理のコストや手間を削減したい
・レパラート(ガラス標本)を複数人や施設と手軽に共有できるようにしたい
・できるだけ安価かつ高品質にバーチャルスライドを作製したい
・スキャナを導入したいが、コストや人的リソースの問題で諦めている
・スキャナを導入しているが、時間・人手不足によって活用できていない
バーチャルスライドを導入するにあたり、懸念される点は大きく2つあります。
まず1つ目は『コスト』です。
スキャナを購入するコストは非常に大きな問題です。
遠隔病理診断に対する診療報酬の体制から、導入コストの採算がとれるというものではありません。大きな予算がつくのは難しいことも多いでしょう。
次に2つ目は『時間・人手不足』です。
現場の臨床検査技師にとって、プレパラートを作製するのみでなく、スキャンするという作業は時間・人手が必要となります。
慣れない作業の上、運用の方法なども決めなければならず大変な労力を要します。
これらの懸念を『ImagingCenter』は解決いたします。
Imaging Center(イメージング・センター)では、お客様からお預かりした病理組織・細胞のガラス標本(病理標本・病理スライド)をデジタル化し、⾼精細なバーチャルスライドとして納品いたします。
過去の病理標本の保管・活⽤はもちろん、オンラインでのカンファレンスや、関連施設間での遠隔病理診断・コンサルテーションにいたるまで、病理診断に関わる様々な業務に新たな価値を提供し、デジタルパソロジーの環境構築を最⼤限にサポートします。
PidPort(デジタル病理支援クラウドシステム)
『PidPort』はデジタル病理標本の最適な保管庫としてご利用いただける、病理画像管理クラウドサービスです。
以下のような課題を『PidPort』は解決します。
・病理医不足による業務負担や心理的負荷が大きい
・病理標本の保管・管理工数が増え続けている
・症例の共有やコンサルテーションを手軽に実施したい
・各診療科とのカンファレンスをオンラインで実施したい
・バーチャルスライドをうまく活用できていない
複数の医療関係者がクラウド上にある病理標本を、いつでも・どこでも閲覧可能にします。施設を跨いだ大規模なデータベースの構築にもお役立ていただけます。効率的で迅速な病理診断をトータルで支援します。
納品方法はPidPortのシステム上に限らず、HDD等での納品も可能です。PidPortを希望される場合は、お客様の専用アカウントとストレージを発行します。その際はメールアドレスだけでアカウント発行が可能です。
活用が期待されるシーンは以下の通りです。
・遠隔病理診断/コンサルテーション
グループ病院や各地に抱える関連病院との間に、強固な相互扶助のネットワークを構築することで、日々の診断業務をより快適にし、現場の病理医の負担を軽減します。
・カンファレンス/CPC
新型コロナウィルス感染症の流行に伴い、密集する空間を避ける必要がある環境下で、自宅などの遠隔地からでも容易にカンファレンスを開催・参加できる体制を整えます。
・症例共有・講義
注目視野の限られた顕微鏡写真による学習ではなく、病理診断用の標本全体をバーチャルスライドでじっくり観察しながら学べる環境を構築することで、大きな学習効果が期待できます。