学生講義用途での活用事例

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導入事例_国際医療福祉大学_01

国際医療福祉大学 病理・病理診断学

主任教授 潮見 隆之先生

※インタビュー当時(2020年11月)のご状況であり、現状とは異なる場合がございます

学生約140人の学習・講義の質向上を実現
約5000枚のスライドガラスの準備工数削減に成功

学生への病理学の教育用途にPidPortをご利用いただいている国際医療福祉大学 潮見 隆之先生に、PidPortの導入背景や活用方法についてお話を伺いました。

導入前の課題

  • コロナウイルス感染症の影響で学生の学習環境に制限が生じていた。
  • 学生の人数分のスライドガラス(数千枚)を事前に準備する必要があった。
  • 顕微鏡のみを用いた実習では、教員が学生ひとつひとつの顕微鏡の視野やピントを調整してあげるサポートが必要だった。

導入後の効果

  • すべての学生が場所や時間を問わずデジタル標本にアクセスすることができ、学習環境がより充実。
  • 事前準備の工数が削減。変更の際もファイルのみの差し替えで対応可能に。
  • 学生一人ひとりが病理標本を効率的に観察できる環境を実現。

国際医療福祉大学での病理分野の顕微鏡を使って行う講義・実習はどのようなものですか?

国際医療福祉大学医学部での病理学総論の授業は、15コマの講義と30コマの実習から構成されています。学生は講義で理論について学び、実習に用意された顕微鏡やiPadを用いて対応する標本を観察し、スケッチを行うことを通して実際の疾患を確認します。
本学では、PidPortを用いる前から、学生の人数(140人)分の顕微鏡と80台の実習用iPadが使用可能な環境で、学生一人ひとりにプレパラートを配布した上で、あるスキャナシステム・メーカーの画像配信サービスおよびiPad上の画像ビューワーのアプリケーションを用い、学生全員が自分で顕微鏡またはiPadを選んで標本の観察を行える環境が整備されていました。

なぜ学生講義用にPidPortを用いることにしたのですか?

上記の通り国際医療福祉大学では、他の大学と比較しても恵まれた学習環境が既に整備されていましたが、既存の画像配信サービスでは様々な制約に課題を感じるところがありました。
病理学実習では例年、授業時間を超えて度々居残りをして取り組む学生も少なくないのですが、新型コロナウィルス感染症の影響もあり、時間外の学習への対応がしづらい状況となりました。このため実習室に設置している顕微鏡や学内LANからのアクセスに限定される既存の画像配信の方法では、学生の学習環境に制約が生じていました。
また、授業前の予習や授業後・試験前の復習という観点からも、既存の方法では学生がいつでもどこでも標本を観察できるという環境を提供できていませんでした。 PidPortは、Webベースのデジタル病理標本のクラウドストレージとビューワーを備えたシステムであるため、適切に権限管理を行った上ですべての学生が場所や時間を問わずにデジタル標本にアクセスすることができ、実習中はもちろん、実習前の予習の資料としても、その後の復習の材料としても利用でき、学生の学習環境をより充実させることができると判断しました。

デジタル標本を用いて講義を行うメリットは何ですか?

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学生にとって、顕微鏡の扱いに慣れながら標本を観察することにも大きな意味がありますが、デジタル標本を病理学の講義に導入するメリットも多くあります。
講義・実習の質や学生の理解度向上または学習の双方向性という意味では、たとえば病理以外の臨床実習中や他学部での講義など、学生全員分の顕微鏡が用意できない環境でも、個人のPCやタブレット端末を用いてPidPortを通じて一人ひとりが自分で病理標本を観察できるような状況を実現できます。
また顕微鏡のみを用いた実習では、従来であれば標本中の観察すべき視野を自分でスムーズに発見できない学生に対して教員がひとつひとつの顕微鏡の視野やピントを調整してあげるようなサポートが必要でしたが、デジタル標本を用いれば、教員・学生の両者が同じ画面を閲覧し、授業しながら学生の理解度を確認しつつ教えるようなことも可能になります。
授業を行う教員やその準備を行うスタッフの観点からは、学生の人数分のスライドガラスを事前に準備する(たとえば、学生が100人の実習で扱う標本が50種類ある場合には、100 × 50 = 5,000 枚の標本が必要となる)手間が圧倒的に軽減されるメリットがあります。各学生に同じ標本を準備すると相当な枚数になりますが、教材としてより良い標本が手に入った時や、経年劣化・退色によって教材用の標本の入れ替えが必要になった際にも、デジタル標本であればファイルのみの差し替えで対応できます。
また、これまではスライドガラスの準備の手間が理由で、大量に準備可能なHE染色標本に教材の構成が偏ることがありましたが、デジタル標本ではHE染色標本以外にも、同じ切片の特殊染色・免疫染色などを1枚ずつ用意するだけで全ての学生の手元に届けることが可能になるため、それぞれの染色の違いを比較しながらの観察が可能になるなど、教育の質の向上にも繋がります。
他にも、連続切片として学生の人数分の標本を作成すると、それぞれの学生に配布されたスライドガラスによっては病変が消失してしまう事態も回避できますし、学生にとって発見が容易でない微小病変が含まれる標本についても事前にアノテーションを施しておくことが可能など、多くのメリットがあります。

実際に講義中にPidPortを試用した感想などお聞かせください。

国際医療福祉大学医学部の病理学の講義・実習の資料として、PidPortでデジタル標本を観察するためのリンクとアカウント情報を掲載したところ、特別な説明を全く必要とせずバーチャルビュワーを様々に操作して自発的に学習を進めている様子が見受けられました。学生は既に様々なデジタルツールの取り扱いに十分に慣れていることや、PidPortのインターフェースや操作性が初めてのユーザーにもよく馴染むものであることが理由であると考えられます。
既存の類似バーチャルスライドの配信サービスでは、アクセスが学内LANからに限定されたり、事前に各端末に専用アプリケーションのインストールが必要となる場合が多いですが、クラウド・Webベースで動作するPidPortは、PCやタブレット端末をもつ全ての学生が、特別なソフトウェアのインストール等を全く行うことなく、一般的なWebブラウザを用いて事前に発行・配布された専用のアカウントでアクセスすると使用することができるため、新たなシステムを導入するコストが最小化されています。
顕微鏡の使い方に十分に習熟し顕微鏡で標本を観察できるようになることも学生の学びとして非常に重要であることに変わりはなく、大きな手術材料などの検体の閲覧には顕微鏡とスライドガラスが向いていると感じることもあります。しかし、学生講義用途としてバーチャルスライドは十分に活用できる段階にあり、学生のための講義・実習のクオリティの向上、新型コロナウィルス感染症のような授業の場所や時間に制限を強いられる状況の解決、いつどこでも予習・復習可能な学習環境の提供、教員やスタッフの授業中やその準備の手間の軽減など、多くのメリットがあると考えられます。

最後までお読みいただきありがとうございました。

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