カンファレンス用途での活用事例

産業医科大学医学部皮膚科学教室  教授 澤田 雄宇 先生

※インタビュー当時(2024年2月)のご状況であり、現状とは異なる場合がございます

症例検討を身近に。PidPortで切り拓く地域連携の未来

PidPortの導入背景や活用事例について、産業医科大学医学部皮膚科学教室 教授 澤田 雄宇先生と同講師の佐々木 奈津子先生にお話を伺いました。

導入前の課題

  • オンライン会議システムのみでは、症例写真やデータをファイルから選択するなどの操作が難しく、カンファレンスのオンライン開催が難しい状況にあった。
  • データの容量が大きく資料をメールで送ることが困難なため、参加者は事前に症例の詳細情報を確認することができなかった。
  • 症例の画面はオンライン会議システムで共有されるものの、閲覧するのみで個々人が症例を確認することができず、参加者にとっては制約が多い環境下にあった。

導入後の効果

  • クラウド上で一元的にデータを管理できるようになり、症例写真やデータの共有・閲覧がスムーズになった結果、運営や進行上の課題が解消され、オンラインカンファレンスの定期的な開催が可能になった。

  • 参加者は任意の時間にPidPort上で症例を確認できるようになり、事前理解を深めたうえでカンファレンスに参加することができるようになった

  •  場所を選ばず手軽に参加でき症例情報の確認も容易なため、先生方からの評判もよく参加人数は増えてきており、活発な議論の場が生まれている

産業医科大学様で実施されている「症例検討会」について、取り組み内容をお伺いさせてください。

実際のカンファレンス室での様子

 

 私が所属する産業医科大学皮膚科学教室では、北九州市内の産業医大にゆかりのあるクリニックの先生と協力し、地域連携病理検討会というカンファレンスを開催しています。参加される約10施設の近隣クリニック様の症例を中心に、取り上げた症例について臨床像と病理所見から検討するという取り組みです。

 通常、クリニック様からご紹介いただいた患者様は、当病院にて皮膚生検をおこない病理検査を実施し治療を進めていきます。クリニックの先生にとっては紹介後に病理そのものを見る機会が限られてくるため、ご自身が紹介した患者様の病理や診断に関心をお持ちの方が多くいらっしゃいます。特に、皮膚科の先生方は皮疹の配列など目に見える形に関心が高く、病理についても検体を切って終わりではなく、それがどういった診断になるのかを突き止めたい方が多くいらっしゃるのです。例えば、紹介した患者様の検体に関して「悪性」とのレポートが返ってきたものの、少し疑問があるというケースなど、取り上げてほしい症例のリクエストをいただくこともあります。

 症例検討会は、ご参加いただく先生のためだけに行っているのではありません。私たちにとっても解説をすることで新たな気づきや学びの機会に繋がっています。互いに顔を見合わせて意見を交換する場を持つということは、相互の理解や連携を強化するという意味でも有意義です。また、若手医師の教育という役割も果たしていますので、珍しい症例を取り上げて場を盛り上げるなどして、先生方により興味を持っていただけるような工夫もしています。


過去に一度、症例検討会のオンライン開催を試みるも断念されたと伺いました。当時はどのような課題が生じていたのでしょうか。

 
 症例検討会は、もともとは先生方に大学にお越しいただき実地にて行っていました。けれども、新型コロナウィルスの影響で開催が難しくなり、会の開催を中断せざるを得えない事態に。ようやく状況が落ち着いたため再開を模索しようとしたところ、今度は参加される先生方がオンライン会議システムの活用に慣れていたこともあり、オンラインでの開催要望が多く寄せられました。そこで、オンライン会議システムを用いた症例検討会の運営にチャレンジしてみることになりました。

 しかし、オンラインでのカンファレンス運営はなかなかうまくいきませんでした。会議システムこそオンラインに切り替えてみたものの、症例の写真やデータはパソコン内のローカルファイルシステムに保存されていたため、共有方法に課題が生じてしまったのです。皮膚症例の場合、臨床写真や皮疹の形、そしてダーモスコピーと呼ばれる皮膚を拡大した写真と病理(バーチャルスライド)の関連性を見る必要があります。これらを見比べるためには、フォルダから対象の画像を選択し手動で画像の切り替えを行わなければなりません。会の進行をしながら画面操作を同時に行うことは非常に難しく、画像を開閉する際に誤ってオンライン会議システムそのものを閉じてしまいそうになることも…。また、事前に資料を共有しようとしても、データ容量が大きすぎてメールで送信することができず、ファイル転送サービスを使用してもダウンロードに時間がかかるなど、資料の共有にはどうしても煩わしさが伴ってしまいます。
 
 さらに、会の開催中にはオンライン会議システムの共有画面を見るだけで個別のファイル操作ができず、先生方が個別に拡大したい箇所を確認することができないといった不便さも生じていました。結局、こうした課題からオンライン会議システムでの開催は一度きりで中断となっていました。


PidPortを活用することで、症例検討会の運営はどのように変化したのでしょうか。

 PidPortの活用により、症例検討会はより身近なものになりつつあります。「ファイルの共有が難しい」という課題に対して、クラウド上でデータを共有できる仕組みは最適な解決方法となりました。また、電子カルテを通して院外からでも許可された施設に限りバーチャルスライドの閲覧は可能でしたが、セキュリティがより強固なクラウドシステムということもあり、安心してアクセスできるようになりました。導入後は、バーチャルスライドはもちろん臨床写真などの画像も一元的に管理し、フォルダの切り替えなしにスムーズな閲覧ができるようになりました。病院にお越しいただく先生もいるため、オンラインとオフラインを組み合わせたハイブリッド形式での開催とし、会議システムは引き続きオンライン会議システムを活用していますが、以前のようにファイルの切り替えに手間取ることもなくなり運営は非常にスムーズになりました。

実際のオンライン会議システムでの様子

 事前に挙げておいた症例を隙間時間に確認いただけるようになったことや、オンライン会議システムの共有画面を見ながら手元のデバイスから個々に興味のある画像やバーチャルスライドを確認できるようになったことなど、クリニックの先生方にとっても症例の確認が容易になりました。利用を開始してまだ3ヶ月ほどですが、操作が簡単で遠隔からの参加も可能なため、先生方からの評判も良く参加者は徐々に増えています。すでに20名ほどの先生にログインしてご参加いただいており、2023年11月より、欠かさずに1ヶ月に1回、1時間半ほどの時間で約15症例を検討し、活発な議論につながりました。今後も少しずつ参加者を増やしながら地域連携のさらなる強化につなげていきたいと考えています。

最後までお読みいただきありがとうございました。

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