学会・講演会での活用事例

  • 広島大学病院 眼科
    診療教授 近間 泰一郎 先生
  • 関西医科大学眼科学教室
    角膜センター長 佐々木 香る 先生  

※インタビュー当時(2024年12月)のご状況であり、現状とは異なる場合がございます

眼科領域におけるPidPortの可能性と教育効果とは?

PidPortの導入背景や活用事例について、広島大学病院眼科 診療教授 近間 泰一郎 先生と関西医科大学眼科学教室 角膜センター長 佐々木 香る 先生にお話を伺いました。

導入前の課題

  • 塗抹検鏡は培養検査と並んで有用な検査方法の一つであるものの、専門的な知識と技能が求められるというイメージが持たれやすく、塗抹検鏡を診断に活用している眼科医が限られており、教育の機会を充実させる必要を感じていた
  • 塗抹検鏡に触れる機会を提供するためにスキルトランスファーの活動を行っているが、顕微鏡でスライドガラスを観察する方法では、参加障壁が高いという課題があった。

導入後の効果

  • 学会や研究会でPidPortを活用することで、参加者が自身のデバイスから手軽に症例を確認できるようになり、興味を持って楽しみながら塗抹検鏡を体験する機会を提供できるようになった。

  • アノテーション機能を活用することで、菌の形態や量、特定の細胞や構造などを視覚的にわかりやすく説明することができ、診断のポイントを明確に伝えることができるようになり、理解度向上につながった。

近間先生、佐々木先生がご専門とされている塗抹検鏡について、簡単にご説明頂けますか?



近間先生:
塗抹検鏡とは、眼の表面や内部から採取した組織や細胞をスライドガラスに塗布し、染色して顕微鏡で観察するという検査手法です。一方、一般的に広く行われている培養検査では、採取した検体を培養して増殖した細菌を観察します。もちろん、培養も非常に重要な検査方法ではありますが、真菌や特徴的な菌については塗抹検鏡で直接診断できるため、培養結果を待たずに迅速な治療を開始できるという利点があります。そのため、私は培養検査と並んで塗抹検鏡も非常に重要な診断手法だととらえています。


佐々木先生: 近間先生のおっしゃる通り、塗抹検鏡は迅速に原因菌を確認できるというメリットがありますよね。また、原因菌を発見した瞬間は、大きな高揚感を感じます。「これで戦えるぞ、この勝負もらった。」という気持ちです。しかし、塗抹検鏡を診断に活用している眼科医は、まだ多くはありません。そのため、塗抹検鏡の教育と普及活動に力を入れていく必要があると感じています。

近間先生:「塗抹検鏡は専門的な知識や技能が必要で、難しそう」というイメージがあるのかもしれません。ですから、我々としては、一人でも多くの先生方に興味を持ってもらうために、スキルトランスファーの活動に取り組むことも使命の一つとして考えています。まずは「難しそう」というイメージを払拭し、「面白そう」という興味を引き出すことで、最初のハードルを下げる必要があります。PidPortはそのような取り組みにおいて、非常に有用な効果を発揮してくれています。

具体的には、PidPortをどのように活用されているのですか?

近間先生: 講演会や研究会ではPidPortに表示される画像をスクリーンに投影し、症例の解説を行っています。さらに、一方的な説明に終始せず、聴講いただいている先生方にもお手持ちのパソコンやタブレットからPidPortにログインいただき、同じ症例のバーチャルスライドをオンタイムで見てもらうようにしています。そうすることで、参加いただいた先生方も興味を持って積極的に症例を見てくれるのです。

【実際のPidPort画面】


佐々木先生:
臨場感が出るため、楽しんでくださる先生方が多いですよね。バーチャルスライド以外の症例写真などの補足資料も格納できるので、塗抹のバーチャルスライドと合わせて、患者の背景や病変全体のイメージを紐づけて理解することもできます。また、菌の形態や量も視覚的に捉えられるだけでなく、アノテーション機能を活用して、例えば好中球の位置を示すなど、特定の細胞や構造に注目させたり、診断のポイントを分かりやすく説明したりすることもできます。視覚的な要素を効果的に活用することで、口頭での説明よりもはるかに理解度が高まり、説得力を持たせることができる点が便利です。


近間先生:
参加する先生方にとって、顕微鏡で直接見るのはハードルが高いかもしれませんが、PidPortを使えば手軽に体験することができます。例えば、アノテーションを隠して素の画像を提示し、どんな菌がいるのかを当ててもらうなど、クイズ形式にするのも良いかもしれませんね。工夫次第で、より多くの先生方に興味を持ってもらうきっかけを作れるのではないでしょうか。

眼科領域におけるPidPortの今後の展望についてご意見があれば教えてください。

近間先生:眼腫瘍の教育においても、PidPortは有効的に活用できると思います。 眼腫瘍の診断では病理検査が不可欠であり、眼科専門医試験でも病理の症例が出題されています。そのため、学生への講義では、共有顕微鏡でスライドガラスを観察する方法を採っている先生方が多いと思います。もし、顕微鏡の代わりにPidPortを活用できれば、講義を行う側の負担が軽減されるだけでなく、学生や受講者は同じ症例を同時に閲覧することができますので、理解を深めるのにも役立つのではないでしょうか。
佐々木先生: 塗抹検鏡においても、眼腫瘍においても、デジタル技術を活用することで、症例をより効率的に共有でき、若手医師が多くの症例に触れながら高いモチベーションで学ぶことができれば、結果的に、患者さんにより適切な医療を提供することにも繋がります。次世代を育てる立場としては、PidPortなどの新しいツールを積極的に取り入れて、教育環境をさらに充実させて行けたら良いですね。

最後までお読みいただきありがとうございました。

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